普段の生活の中ではなかなか出会う機会のないジャンルの人って、いますよね?
変わった仕事をしている人、変わった経歴を持つ人、変わった趣味を持っている人…。
そんな人たちに会って、話を聞いてみるという企画が【DKO人物奇譚】。
読むと人生のヒントが見つかるかもしれない。…見つからないかもしれない。
山田はるかさん/現代アーティスト・メイクアップアーティスト
第1回目はDKOメンバーの友人でもある山田はるかさんです。
山田はるかさんは女子美術大学短期大学部デザインコース専攻科を卒業後、様々な芸術活動を行う現代アーティストです。
代表作は「男想~男装×妄想~」「ヘルタースケルター」「1人V系バンドプロジェクト」などなど。
「男想~男装×妄想~」とは?
「彼氏・結婚相手のいない女性にインタビューをし、日頃考えている理想の男性像・理想のシチュエーションを語ってもらい、それを本人自身に理想の男性像に成りきってもらう彼女達の妄想をもとにした小説風の物語が付随している」とのこと。観客が手に取って読む、本の作品です。
「男想~男装×妄想~」の作品はこちら。
華妖.vijuとは?
山田さん自身が4人のバンドメンバーに扮し、1人4役をこなす4人組ヴィジュアル系バンドが「華妖.viju」。楽曲はこちら。
最近では現代アーティストの他に、プロのメイクアップアーティストとしても活躍中!
その中でも、山田さんが得意とするのは女装娘や男の娘、ニューハーフなどのメイク!
どんな男性でも美女に変えてしまう山田さんのメイクは口コミで広がり、今では、全国各地の女装娘、男の娘、ニューハーフから引っ張りだこ!そのような方たちが出演するAVの現場でもメイクさんとして引く手あまた!その技術に敬意をこめて「山田先生」と言われることもあるそう。
↑女装メイクの例
テレビドラマ化して話題の「レンタルなんもしない人」にも女装メイクをして、twitterで大バスり!
そんな山田はるかさんの話を聞くべく、DKOメンバーの野口&レイが取材に行ってきました。
「女というだけで区別される」現象に違和感を感じていた幼少期
野口
僕たちは、はるかさんと仲良くしてもらってますし、僕たち
企画ユニットDKO主催のトークイベントにも出てもらったこともあるんですけど、意外とはるかさん自身の話を聞いてこなかったので、それを聞きたいなぁ~と
山田
意外と薄っぺらいと思いますよ(笑)
野口
女装娘さんたちへのメイクで最近は有名になってますけど、はるかさんの本職は芸術家・現代アーティストなんですよね。意外と現代アーティストとしての顔を知らなくて…。そもそも、現代アートはいつから始めたんですか?
山田
現代アートは女子美術大学に入学して授業で現代アートというものがあるのを知りました。現代アートってコンセプト重視だから社会派なんですけど、それを知った時に「あ、これだ!」って思ったんです。
レイ
私も芸大出身だからわかるんですけど、現代アートってジェンダーとかゴミ問題とかを社会派な問題をテーマにしてたりするんですよ
山田
で、私は結構「ジェンダー」に対して違和感を覚えていたから「現代アートでならそういう事も主張できる」と思って「現代アートやろう!」って思ったんです。
野口
ジェンダーに違和感を覚えていたのは小さい頃からですか?
山田
そうですね。「女らしく」「男らしく」みたいなのとかに違和感を…。
野口
それを表現するために現代アートをやろうと思ったんですね。ちなみに芸術というものには昔から興味あったんですか?
山田
はい。美術系のアーティストやクリエイターになるものだと小さいころから勝手に思ってたんです(笑)
レイ
「なるもの」だと!?(笑)
山田
何の迷いもなかったというか、将来何になろうかなとも考えたこともそんなになかったです。それくらい芸術系のクリエイターになるんだって思ってました。
レイ
へー!
山田
でもそれは父親の影響なんです。
野口
お父さんは何をしている人なんですか?
山田
父親はグラフィックデザイナーをやってます。美術とかデザインとかイラストとかが身近にある環境だったから、小さいころから毎日、絵を描いてましたし…
野口
へー!小さい頃から芸術に触れ合ってたんですね!
大ファンだったMALICE MIZERの絵を描くことで自然とメイクの感覚が養われた
山田
小学校の時ってクラスに1人、絵が上手い人いるじゃないですか?私、それだったんですよ。
野口
あー!文集に絵を描く人だ!
山田
書いてた!(笑)
レイ
修学旅行のしおりの表紙を描く人だ!
山田
書いてた!(笑)
レイ
普段はどんな絵を描いてたんですか?
山田
アニメっぽい絵とか簡易的な女の子のイラストとか…あと私、MALICE MIZER(マリスミゼル)が好きだったから、MALICE MIZERのメンバーの顔とかも描いてました。
※MALICE MIZER…90年代から00年代初頭まで活動した伝説のヴィジュアル系ロックバンド
野口
へー!小学生でMALICE MIZERにハマるなんて大人びてますね。
山田
でも、そこで私は化粧の知識とか感覚を養ったんですよ!ナチュラルメイクというより濃い化粧の感覚を養った気がします。
野口
おお!いまのメイクの仕事につながってるんですね!
レイ
確かにメイクって「影を増やして目の面積を…」とか「顔の形をどう錯覚させるか?」みたいに、絵の要素がありますもんね。
野口
なるほど。V系であるMALICE MIZERの絵を描くことで自然とメイクの感覚が磨かれたんですね。ということはインドアな子供だったんですか?
山田
いや、私、小学生の時に少年野球チームに入ってたんですよ!絵を描くのも好きだけど、そういうアウトドアな一面もあったんですよ
野口
そうなんですか!?絵描いてる子ってお昼休みのドッジボールにも参加しないインドアなイメージですけどね
山田
ドッジボールも超やってました!
レイ
活発~!
山田
ちなみに、その少年野球チームは私が女子選手第1号だったんです。
レイ
わー!伝説の選手だ(笑)
野口
野球好きだったんですか?
山田
別に(笑)でも運動は得意だったし、毎年、運動会のリレーの選手になってました。
野口
すご!
山田
あと、小さい頃から男女の役割を区別されるのがすごく嫌だったんですよ。少年野球チームとか「男がやるもの」みたいな感じじゃないですか?
野口
まあ確かに。
山田
それを打ち破ってやりたかったんです!
野口
男の子はスポーツやって、女の子はピアノやって…みたいなのが嫌だったんですね
山田
そうです。腹立ってました(笑)
野口
でも、小学生の時点で、その感覚あるのがすごいですね
レイ
「思ってる」だけじゃなくて、挑んでいくのが凄いですよね。「私で証明してやるぅ!」みたいな(笑)
野口
男女の役割を区別されることへの違和感はいつごろからあったんですか?
山田
小学校の低学年ぐらいからです。これは大人になって思ったんですけど、私の両親は「女の子だからこうしなさい」とか「お姉ちゃんだからこうしなさい」みたいなことを言わなかったんです。それはわざと言わないようにしてたらしいんです。
レイ
ご両親は気を付けてたんですね!
山田
だから、保育園とか小学校に入った途端、急に「女というだけで区別される」っていう現象に出会って違和感を覚えたんです。
レイ
女の子はピンクのスモッグを着る…みたいな
山田
そうそうそう!「なんでそんなに決めつけられなきゃならないんだ!」って思ってました
野口
その思いがずっとあるんですね
山田
今でもずっとあります。それが全ての原動力です。アートをやろうと思ったのもそれがキッカケですしね。
レイ
性転換とかをして、男になりたいとかは思わなかったんですか?
山田
それはなかったです。だって男になったら男になったで「男の区別」があるでしょ?
野口
「男らしく」とか「男なんだから」って言われますもんね
山田
だから「男女」に固執してるわけじゃないです。どっちかって言うと、性別による区別や、固定観念をどうにかしたいと思っています。
野口
じゃあ中学校入ったら、そういう思いはより強くなりません?思春期だし…
レイ
制服とかも男女で決まってますし。
山田
でも、制服に対してはそんなに思わなかったですね。
レイ
あ、そうなんですか?
山田
小学校の途中まではズボンしか履かなかったりしたんですけど、それは、男女の区別うんぬんというよりは、ファッションとか化粧に小学校高学年ぐらいで、目覚め始めたから、そういうのも相まってだと思います。
野口
なるほど。
山田
でも化粧とかファッションに目覚めたのは、別にモテたいからとか、誰かのためではなく、「ただ、自分が好きだからやる」みたいな感じでした
レイ
化粧とかどんな感じだったんですか?
山田
中学校の時からマリスミゼル風の化粧とかしてましたよ(笑)
レイ
へー!青い口紅!みたいな?(笑)
山田
そうそうそう!でもその時は青い口紅なんて売ってないから、東急ハンズに行って舞台用の化粧品を探して買ってました
レイ
へー!!
なんの迷いもなく「芸術家になる!」と思っていたが、進学したかった美大にことごとく不合格…。
野口
それで高校に行くじゃないですか?高校入った時には、もう美大に行こうと思ってたんですか?
山田
はい。というか迷いがなかったですから。他に選択肢がないというか。
レイ
あ、そうか。芸術系のクリエイターになるって決めてるんですもんね。
野口
でも、その意思の強さすごいですよね。僕もそうでしたけど、みんな、なんとなく「進学するかぁ」ぐらいなのに
レイ
「センター試験で判断しよう」みたいな感じですもんね
野口
美大に行くのに美大予備校みたいなのってあるんでしたっけ?
山田
そうそう!通ってた美大予備校が山本さほちゃんと一緒だったんです。
※山本さほ…「岡崎に捧ぐ」などで知られる人気漫画家
山田
あと最近ドラマになった「左利きのエレン」の原作者のかっぴーさんも同じ美大予備校でした
野口
すげえ!有名人ぞろい!
山田
すごく小さい美大予備校だったけど、有名な人を輩出してるんです。
野口
で、大学受験はどうだったんですか?
山田
受験落ちまくって女子美術大学の短大に行きました(笑)
野口
どこの美術大学を受験したんですか?
山田
多摩美術大学のグラフィックデザイン科が第一志望で、武蔵野美術大学の視覚伝達デザイン学科が第二志望で、桑沢デザイン研究所が第三志望でした。
※桑沢デザイン研究所…東京都渋谷区にあるデザイン専門学校
山田
でもうちは、やや貧乏だったから「浪人はできない」と言われたりして、変にプレッシャーを感じて、受験に落ちまくって、滑り止めで受けた女子美術大学の短大に行ったんです。
野口
へー!そうだったんですね。女子美術大学への入学は素直に受け入れられたんですか?
山田
最初はめちゃくちゃ腹立ってましたよ(笑)意識の低い学生もいたから、「ちっ!なんでコイツらと…」とか思ってたけど(笑)でも、現代アートにも出会えたし、ジェンダーの講義がちゃんと聞けたりしたのも、女子美ならではのところもあると思うので、結果的に、女子美術大学に入ってよかったと思ってます
レイ
で、大学でいろいろ学んだあとに現代アーティストになったと
野口
僕たち放送作家もそうですけど、芸術家も、名乗って活動さえすれば、その職業になれちゃうじゃないですか?
レイ
資格もいらないですもんね
野口
美大を卒業して、まずはどんな活動をしてたんですか?
山田
えっとですね…
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今回はここまで!次回は山田さんの現代アーティストとしての歴史に迫ります!
山田さんが、女装メイクの世界に飛び込んだキッカケも明らかに!
ニューハーフAV女優にブチギレられた話なども!
中編につづく…
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